マンションを購入する際に頭金はいくら必要なのか分からない人や、資金の余裕がなく購入をためらっている人も多いのではないでしょうか。
平均額や目安が分からなければ、いくら貯金すればいいのか貯金の何割まで捻出してもいいのかが予測できません。
物件を購入する時点での年齢が若いほど頭金を用意する割合は少なく、30代では全体の約17%の割合が頭金なしで物件を購入しています。(住宅購入に関する調査2022(ARUHI))
年齢だけでなく、世帯年収でも用意する平均額は差が開いています。
自分自身の家庭の年収や、ローン契約者の年齢を加味して、貯蓄を減らさずに物件を購入できるのか検討しましょう。
この記事では、これからマンションを購入する人に向けて、注意点や返済のコツを解説しています。
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マンション購入時に支払う頭金とは
マンションを購入する際に支払う頭金とは何に対するお金を指しているかご存知でしょうか。
「物件購入価格」の中から自己資金を支払う部分のことを指します。
マンション販売価格から住宅ローン利用額を差し引いた残りの額です。
このお金は、ローンを利用しない部分で物件の価格に充当されるため、支払い額が多いほどローンの借入額が少なくなる点が特徴です。
諸費用と混在されがちですが、物件の仲介手数料や火災保険などといった諸費用は頭金には含まれません。
頭金ゼロで購入できたとしても、諸費用を支払う必要があります。
手持ち資金に余裕がない人は物件を購入する前に支払うべき費用がどれだけあるか確認することが大切です。
自らの親や配偶者の親から援助してもらっている家庭も一定数存在しますが、ほとんどの家庭は預貯金から支払っています。
資金の計画を立てるために、いくら必要になるのか平均額や支払う際のメリットを解説します。
– 頭金を支払うメリット
【年収別】頭金の平均額
年収 | 頭金 | 物件購入価格 |
400万円未満 | 0~200万円未満 | 約1,500~2,500万円 |
400~600万円未満 | 0~200万円未満 | 約2,500~3,000万円 |
600~800万円未満 | 200~500万円未満 | 約3,000~3,500万円 |
年収と比例して、物件購入価格は高くなる傾向です。
そして、物件の価格によって頭金の額は変わります。一般的に、マンションを購入する場合の頭金の平均額は、物件価格に対して新築マンションは17.4%ですが、中古マンションは13.8%です。(2021年度フラット35利用者調査(住宅金融支援機構))
マンションでなく、戸建てを購入するなら土地の価格は個人の売主へ、建築費は施工会社へ支払うケースもあり、考え方が異なるため注意が必要です。
フラット35の利用者が支払っている平均額は、5,000万円の新築マンションなら約900万円、3,000万円の中古マンションを購入するなら約400万円という計算結果になります。
しかし、住宅を購入する際には税金や売買契約書の印紙代などの諸費用が必要です。
これらの諸費用は物件価格の約5%が目安とされているため、貯蓄から用意する金額は諸費用を含めた計算をしておくことが大切です。
≫≫ 住宅ローン借入れ限度額の基準を解説!年収での目安金額もご紹介!
頭金を支払うメリット
頭金ゼロでも物件は購入可能ですが、頭金を支払う場合はメリットがあります。
- 総返済額と毎月の返済額が減る
- 住宅ローンの金利が下がる
- 金融機関の審査に通りやすくなる
住宅ローンの総返済額や、毎月の返済額は借入額と金利が大きく影響を与えます。
例えば、3,200万円の物件で金利1.5%のフルローンを組んだ場合、35年間で計算をすると総返済額は約4,115万円、毎月返済額は97,979円です。
同じ物件で200万円頭金を支払い、3,000万円のローンを同じく1.5%の金利で組んだ場合の総返済額は約3,858万円、毎月返済額は91,355円です。
頭金を支払った200万円分の差額を含めても、総返済額には約260万円もの差が生まれています。
また、頭金を支払うことで金利を優遇している金融機関も多く、金利が低ければ利息額が減り、毎月の返済額や総返済額は少なくなります。
さらに、金融機関の審査に通りやすくなるメリットがあります。
住宅ローンを組むにあたり、金融機関が審査をする内容は年収や勤続年数、会社の規模以外に大切なポイントが返済比率です。
返済比率とは、年収に対するローンの返済額の割合を指します。
一般的に35%を超えると審査が通りにくくなる傾向にあり、金利が1%の場合は、年収が400万円なら4,130万円、500万円なら5,160万円が借入可能額の目安となります。
家計が圧迫されずに返済可能な比率の目安は20%程度とされているので長期的なローンを組む場合は、借入可能額ギリギリの物件を購入することはオススメしません。
マンション購入時の頭金ゼロの3つの注意点
頭金ゼロでもマンションは購入可能で、実際に用意をせず物件を購入している人は一定数存在します。
しかし、物件の購入価格の全額を借入する場合はリスクが付きものです。
金利が高く毎月の返済額の負担割合が多くなる、手付金の用意は必要など、いくつか事前に知っておくべき点があります。
注意点を3つに絞って解説をしていくので、これからマンションを購入する予定の人は参考にしてください。
– 借入金利の割合が高くなる
– 頭金ゼロでも手付金は必要
頭金ゼロでフルローンのリスク
マンションの購入価格をフルローンで組んだ場合、ローン返済前に売却をしなければならなくなった際に借金だけが残ってしまう可能性が高いです。
新築マンションは、築5年ほどで約10%、築15年で約20%と築年数が経過するごとに下落率が大きくなります。
購入価格をフルローンで借り入れている場合には、売却時の価格がローン返済額を下回っていると、残りのローン借入額を一括で返済しなければなりません。
差額を一括で返済できなければ、新たにローンを組み直す必要があり、金利は住宅ローンより高くなります。
そのようなリスクを避けるためには、新築マンションのみにこだわらず中古マンションを購入することも視野にいれておきましょう。
新築マンションは、マンションギャラリー設営費を含めた宣伝広告費が約5%、販売業者の利益が約10%含まれて販売されています。
その点、中古マンションは市場価値に沿った価格の交渉が可能です。
間取りやデザインなど好みの仕様にできる中古マンションは、リノベーション費用を足しても新築よりお得に手に入れることができ、資産価値が上昇する可能性もあります。
新築マンションにこだわって物件の購入を諦めるよりは、プロのリノベーション会社に予算内で購入できるマンションの相談をしてみましょう。
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借入金利の割合が高くなる
頭金を入れた場合は、借入金利が下がる金融機関がほとんどです。
フラット35を利用するなら頭金を10%支払えば金利が低くなりますが、反対にゼロだと平均で0.4%ほど高くなる傾向です。
2,000万円の物件を購入するケースを比較してみましょう。(フラット35住宅ローン金利ランキング(ダイヤモンド不動産研究所))
住宅ローン額 | 金利 | 月々返済額 | 総返済額 | |
頭金あり | 1,800万円 | 1.68% | 56,714円 | 23,819,623円 |
頭金なし | 2,000万円 | 2.08% | 67,076円 | 28,172,022円 |
差額 | 頭金分200万円 | 0.4% | 10,362円 | 4,352,399円 |
表のとおり、頭金200万円分を差し引いても総返済額には約230万円以上もの差が生まれています。
35年間という長い期間は、人生において想定外の事態が起こる可能性も少なくはありません。
金利が低いほど、毎月の返済額は減ります。
不測の事態に備えて、少しでも預貯金を残しておくために借入金利には注目をして住宅ローンの選択をしましょう。
頭金ゼロでも手付金は必要
ほとんどのマンションは、売買価格の約5~10%の手付金が必要です。
売買契約を締結した際に支払う必要があり、売主に対して大きなトラブルがない限り契約を破棄しないという意思表示です。
不動産の取引は口頭で「購入します」と意思を示す人より、手付金を支払って「どうしてもこの物件が買いたい」と意思表示をする人は信頼度が高くなります。
なかには、売主にこだわりがなく手付金なしでも売買契約を結ぶケースもありますが、多くの場合は不動産の売買契約締結時には手付金を支払います。
4,000万円のマンションを購入する予定であれば、200万円~400万円の手付金を用意しておきましょう。
手付金はマンションの購入代金の一部に充当されるため、支払う総額は変わりません。
しかし売買契約締結時に支払う必要のある手付金は、契約を一方的に破棄してしまうと契約違反として戻ってこない可能性があります。
むやみやたらに手付金を支払う前に、売買価格のすり合わせや、物件調査を行っておくことが大切です。
頭金ゼロで住宅ローンを組むなら知っておきたい返済のコツ
頭金ゼロで住宅ローンを組む人は少なくありません。
しかし、返済を行う際に少しでもリスクを回避するコツがあります。
頭金は多い方がいいと言われていますが、住宅ローンを組んだあとでも繰り上げ返済や、金利の交渉、ローンの乗り換えなどお得にする方法は存在します。
頭金がゼロでもほしい物件があれば、少しでもお得になる返済のコツを知っておきましょう。
– 返済条件を調整する
– ローンの乗り換え
資金に余裕ができたら繰り上げ返済
繰り上げ返済とは、月々の返済額とは別に一度でまとまった額を返済する方法です。
繰り上げ返済で支払うお金は全て元本に充てられるため、その部分の金利を支払う必要がありません。
返済方法は「期間短縮型」と「返済額軽減型」の二つです。
期間短縮型は、月々の返済額はそのままで返済期間を短くする方法。
返済額軽減型は、月々の返済額を少なくして、返済期間は変えない方法です。
お得になるのは、金利を支払う期間が少なくなるため、期間短縮型の方がより繰り上げ返済の効果を高く得られます。
繰り上げ返済をする際にかかる手数料や、一度に行える最低額は金融機関により異なります。
一般的には、早い時期にすること、金利が高い人はお得になる額が大きくなりますが、住宅ローン控除の適用期間はどちらがお得になるかしっかり見極めることが大切です。
また、そこまで貯蓄に余裕のない人や将来的にまとまったお金が必要になる可能性の高い子育て世帯は無理をして繰り上げ返済を考える必要はありません。
金利が低い住宅ローンを借りている人も、余裕のある資金は資産運用にまわした方が結果としてお得になる可能性があります。
生活に困らない程度の貯蓄ができれば、繰り上げ返済を検討してみましょう。
≫≫【住宅ローン繰り上げ返済】タイミングやメリット・手数料を解説
返済条件を調整する
住宅ローンを借り換える方法も返済のコツとして後述しますが、銀行に支払う手数料や、抵当権抹消登記の費用、司法書士に支払う報酬、契約書の印紙代などを含めると大きな諸費用が必要です。
借り換え以外に手間やコストを省く方法としては、現行の住宅ローンを利用している金融機関へ返済条件の調整を行う方法が挙げられます。
住宅ローンの借り換えをせず、金利を引き下げたり、月々支払い額の減額ができれば諸費用の支払いや時間を割く手間が大きく減ります。
しかし、金融機関も金利を引き下げることはリスクが高くなるため、すべての人の交渉に応じることはありません。
そのため、交渉をする前に担当者が検討しやすくなるよう事前に他の金融機関から、現在よりも低い金利で借り換えできる審査を通過した証拠を受け取っておきましょう。
金融機関は借り換えをされて、金利として受け取る手数料がなくなるより、現行より金利を下げてでも手数料を受け取りたいはずです。
交渉をしやすくするために資料を集めておくことが大切です。
また、子どもから手が離れ、配偶者がパートから正社員に変更したときには月々支払い額の増額も検討しましょう。
月々の支払い額を増額すれば、返済期間が短くなるだけでなく総返済額も減り、結果としてお得になります。
ローンの乗り換え
住宅ローンを組んだあとに、金利が高くて返済が苦しく感じたときは金利の低い金融機関でローンの借り換えを検討しましょう。
金利は月々の返済額と総額に大きく影響します。
そのため、金利の低いローンに借り換えるだけで返済が楽になり、お得になります。
例えば、ローンの残高が3,000万円、現在の金利が1.5%で残りの返済期間が30年ある人が0.5%の金利の住宅ローンに借り換えをした場合は、総額約400万円ほど支払額が少なくなります。
それに伴い月々の返済額も約1.4万円軽減するため、毎月の支払額に悩んでいる人はローンの借り換えを検討してみてはいかがでしょうか。
しかし、住宅ローンの残高が1,000万円にも満たない場合や、返済期間の残りが10年未満、借り換え後の金利差が少ない場合は借り換えの手数料を含めるとメリットが少なくなるため、シ
ミュレーションを行い比較検討することが大切です。
まとめ
頭金は多い方がいいと思われがちですが、しっかりメリットやデメリットを理解したうえで選択をして、頭金をゼロにするなら返済のコツを確認しておきましょう。
新築物件にこだわっている人は、同じエリアでも割安な中古マンションにも目を向けてみることも大切です。
頭金を準備することにデメリットはありません。
無理な返済計画をたてるのではなく、余裕をもった返済計画で、ゆとりのある生活を送ることをオススメします。