マンションは住宅ローン以外にも月々の支払いが必要な費用があることをご存知でしょうか。
中古物件は新築物件より価格が安価で手が届きやすいと感じている人も少なくありませんが、月々の支払いの合計額を計算したうえで購入を検討することをおすすめします。
月々の住宅ローン返済額は選択をする金利によりますが、フラット35や固定金利を選択していれば35年間の返済額は変わりません。
しかし、修繕積立金は築年数が長ければ長いほど、ほとんどの場合値上がりするといっても過言ではありません。
現在の費用を確認していても、値上げがあった場合は生活が苦しくなってしまう可能性だけではなく、払えなくなってしまうとほかの住民に迷惑がかかります。
この記事では、修繕積立金の使用用途以外に相場や適正価格の算出方法など、購入後にどれくらい上がるのかあらかじめ把握しておけるように役立つ情報を詰め込んでいます。
これから購入を検討している人は、毎月の予算をいくらくらいに想定しておけば安心ができるのか、徹底的に解説をしていきます。
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マンションの修繕積立金の基本的な知識
はじめに、基本的な知識について確認していきましょう。
「マンションの共用部分の設備や建物自体を修繕するために、所有者全員で毎月積立しているお金」のことをいいます。
所有している部屋の専有面積ごとに計算をされた費用を徴収しているため、全ての部屋が同じ金額とは限りません。
部屋が広ければ広いほど、建物全体の使用している割合が多くなるため、負担も大きくなります。
一般的には戸数が少ないほど、1戸あたりの負担が大きくなります。
エレベーターなど設備をとっても、20戸より50戸で1つを管理している方が全員の負担は少なく済みます。
使用用途は、メンテナンスや不測の事態のための工事費用です。
集合住宅は、建物全体の点検や修繕を定期的に行い、全員が安全に暮らせるために維持しなければなりません。
しかし、工事費用は大規模な工事ともなると数千万円が必要になるケースも存在します。
莫大な費用を工事時点の所有者のみで一括で用意することはありえません。
そのため、新築時から現時点までの所有者全員で準備をする費用です。
修繕積立金と管理費の違い
所有者は、決まった額を組合に支払う必要がありますが、名目により使途が大きく異なります。
管理費とは、建物の共用部分の保全・維持を日々実施するために必要な費用です。
ほとんどの場合は、日々建物の清掃や、管理を行ってくれている管理人の人件費に充てられます。
その他に余った費用は、共用で使用をするエントランスやペット洗い場などの照明器具やトイレットペーパーなどの消耗品、水道光熱費、清掃用具の購入など、快適な生活を維持するために使用されます。
マンションの運営にかかる毎月の費用をまかなっている点が特徴です。
その点、修繕積立金は数年に一度の大規模な工事に備えておく費用です。
管理組合が計画している長期修繕計画に基づいて備えている費用なので、毎月固定した費用は一切使われず、工事が行われるまでは貯め続けます。
主な工事内容は、所有者が管理をしている室内の専有部分ではなく、全員が使用をするエレベーターや機械式駐車場の工事、外壁や建物全体の補修です。
この費用を、きちんと積み立てていない物件は、数年に一度実施をする大規模修繕の際にかかる費用を用意できず、必要な工事を先延ばしにしなければなりません。
安心で安全な建物を維持するためには不可欠な費用です。
>>中古マンションの管理費/修繕積立金の違いは?各相場と値上がる要因
修繕積立金の相場は築年数によって変わる
全ての物件が同じ相場ではなく、築年数により判断することができます。
例えば2023年時点で築50年以上経過している、昭和44年以前の物件の平均価格は26,356円。
しかし、築30年前後の平成元年築の物件は11,400円、築10年未満の平成27年以降ともなると、6,654円です。(国土交通省:平成30年度マンション総合調査結果)
築50年以上と築10年未満の物件だと、およそ2万円もの差が生まれています。
築年数が経過していると物件の売買価格が安く、比較的購入を前向きに検討しやすいですが、思いのほか購入後の維持費が高くついてしまう可能性も低くはありません。
購入後の生活は、住宅ローン返済額を合わせた月々の支払いの総額で検討することが大切です。
修繕積立金の適正額と算出方法
適正額は地域によって差が大きく開いていますが、東京圏の平均額は平米あたり196円。
一般的な3LDKの広さ(70平米)だと13,720円となります。
また、今後支払う必要のある修繕積立金を算出したい人に向けて、算出方法を紹介します。
下記で説明をする算出方法はあくまでも目安です。
実際は、マンションごとに作成されている長期修繕計画を幅広く収集し、その事例の平均値と大部分がおさまるような幅を計画しておくことが大切です。(国土交通省:マンションの修繕積立金に関するガイドライン)
※機械式駐車場がある場合でも、駐車場の維持管理・修繕工事費や駐車場使用料について、管理費や修繕積立金と分けて経理している場合などは、加算する必要はない。
算出例
専有面積 | 築年数 | 延床面積 | 機械式駐車場 | 階数 |
70平米 | 15年 | 6,000平米 | なし | 10階建 |
※長期修繕計画が30年の場合(新築マンションは30年以上の計画が必要だと定義されています。)
上記マンションの平米単価を200円とします。
平米単価200円×70平米×12ヶ月×30年=504万円
築15年の中古マンションは、15年間分は支払い済みなので購入予定の不動産会社に今までの修繕積立金の推移を聞くと正確な額が計算できます。
今回は5年ごとに3,000円ずつ推移していると仮定をして新築時~5年目までが7,000円、5~10年が10,000円、10~15年目が13,000円で計算をします。
新築時~5年目 | 5~10年目 | 10~15年目 |
7,000円×12ヶ月×5年=42万円 | 10,000円×12ヶ月×5年=60万円 | 13,000円×12ヶ月×5年=78万円 |
42万+60万+78万=180万となるので、ざっくりと15年間分の支払い済みの費用は180万円だと分かりました。
はじめに計算をした、30年間分の合計額から支払い済みの費用を引きます。
324万円を残り180ヶ月(12ヶ月×15年間)で割ると月々の支払額は18,000円です。
しかし、全期間均等に積み立てをしているマンションは少なくなってきているため、実際には16,000~22,000円の幅を予想しておけば間違いないでしょう。
修繕積立金を値上げする理由は築年数に関係する
全期間で金額を固定する方式を選択している物件も全くないわけではありませんが、築浅物件が最も多く採用しているのは段階的に増額をする方式です。
工事にかかる費用を一律ではなく、当初安く設定し、築年数が経過するごとに増額をして結果的に長期で必要な費用を確保する仕組みです。
また、築年数が経過とともに工事の範囲が広く大規模になるため、劣化に合わせた費用が必要になり必然的に値上げされるケースが多く見受けられます。
– 築年数が経過するごとに改修範囲が増えるため
– そもそもの修繕積立金の相場が上昇している
築年数が浅い時は安く設定されているため
日本全体を見ると全期間固定の均等積立方式が43.2%、徐々に増額をする段階増額積立方式が40.2%という割合で、そこまで大きな差がありません。
しかし、建設年別でみてみると、昭和44年以前に段階増額積立方式採用しているのは約1割ですが、平成27年以降に建てられた物件は68.4%が選択しています。(国土交通省:マンション総合調査平成30年)
おおよそ5年毎に、3,000円程度のペースで増額するケースが多いです。
築年数が経過するごとに改修範囲が増えるため
どの物件にも言えることですが、築年数が浅いうちは建物に劣化は見受けられません。
5~10年を経過すると徐々に劣化が現れ、鉄部や屋根屋上ポンプのメンテナンスが増えます。
一般的に大規模修繕のタイミングは12年ごとと定義されています。
12年ごとの工事は毎回内容や費用が異なり、回数を重ねるごとに改修の範囲が大きくなる点が、築年数を経過すると修繕積立金が増加する要因です。
建築基準法で定められている、「全面打診調査」は、建物の竣工や改修から10年を経過している場合は3年以内に実施する必要があります。
外壁などタイルが剥がれ落ちることによる、事故の防止のために必ず行わなければなりません。
その結果、足場を組んだ大がかりな工事になるため、ほかの部分も同時に行うケースが多いです。
そもそもの修繕積立金の相場が上昇している
平成11年度から相場は増加の一途をたどっています。
例えば、平成11年は7,378円だった相場が、平成30年は11,243円と19年で3,865円も上昇しています。(国土交通省:マンション総合調査平成30年)
月々にするとあまり大きな負担はないかもしれませんが、年間にすると46,380円、30年間では約140万円です。
この背景には、高齢者社会による労働人口の減少や、職人の人手不足、建築資材の高騰などがあり、人件費と材料費を合わせた結果、相場の上昇に繋がっています。
まとめ
この記事では、修繕積立金に関する相場や、値上げされている理由などを紹介しました。
中古マンションの購入時には、現時点で月々支払いをする費用しか分からないと思ってしまいます。
しかし、現時点で適正な額なのか、算出方法を使用した今後の費用などをあらかじめ計算しておくことで、値上げにも対応できるように金銭管理をしておくことが可能です。
相場や値上がりのタイミングをしっかり見極めることで、払えなくなったということがないようにしましょう。